駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

数の学習:つまずくポイントと対策①

「数の学習」に限らず算数や数学の学習とは、大きく見れば具象から抽象へ進む流れです。 その学習の途中に(大人は気付きづらいですが)乗り越えねばならぬ大きな段差がいくつもあります。 今日は生徒がどこでつまずきやすいか、それを乗り越えるポイントは何か、という話です。

 

小学校に入学して初めに習うのは整数(自然数)。 リンゴが3個とか、鉛筆が7本とか目の前にある物と一対一に対応する数です。 ここでは「1、2、3、・・・」という具合に順番に個数などを数えて来た方法から、純粋に「数の大小」を表す数字へ意識を変えるための学習をします。 いわば「指を使った計算」からの卒業、初めての抽象化です。 

 

現実の世界を「純粋な数」の世界に置き換えて4桁の足し算・引き算が出来るようになるまでに、小学校では1年半という時間をかけます。 ここで大人がしがちな間違いは、「なんでこんな簡単なことも出来ないの」と叱ってしまうことです。 最初の算数嫌いは、ここで生まれます。

 

子どもの計算間違いが叱って無くなる訳がないのに、つい厳しく叱ってしまいがちです。 要注意です。 ここで必要なのは

 1:繰り返し演習をさせること

 2:間違いが減って褒められた体験をさせること

そして出来れば

 3:間違いの原因を見極めて適切な指導をしてあげることです。

 

 

小2から小3にかけて、掛け算と割り算を学びます。 ここでも大人がしがちな間違いは「こんな簡単な計算に何分かかってんのよ」と叱ることです。 はい、また算数嫌いが生まれました。

 

時間がかかることを叱られたら子どもはどうすれば良いのでしょう? 時間がかかるのは怠惰だからですか? 時間がかかること(=結果)を叱るのではなく、原因を見つけて対処してあげるべきです。 そして多くの場合、計算が遅い原因は単純に九九の暗唱のスピード不足です。 

 

九九の暗唱を流れるようにできる、そして出来れば「72は?」と聞かれたら「9掛ける8!」と即答できる、それだけの練習で計算速度が大きく改善された子を見てきました。  

komazawajuku.hatenablog.com

 

 【以下、等分除と包含除の話ですが算数教育に興味無い方は飛ばしてください】

小3の終わりには二種類の割り算、「等分除」と「包含除」を学びます。 いよいよ「割合」という抽象化の大きなステップにつながる大切な概念の登場・・・なのですが、 小4や小5で学習塾に来る子で二種類の割り算の違いを明確に意識できている生徒は、ほぼ居ないです。

 

逆に、二種類の割り算の違いを教える「手段」としての計算式の書き方の違いにこだわって、

「 2 × 3 = 6 」 と書くべき答案を生徒が 「 3 × 2 = 6 」 と書いたために不正解にした小学校教師への批判が、これまでに何度も話題になって来ました。

 

私は小学校の3年生で等分除と包含除の違いについて時間を取って教えることに疑問をもっています。 これを扱うのはもっとずっと後で良く、割合の学習で理解を助ける物の見方として教える程度で十分と考えるからです。 割り算が判らないという生徒には等分除と包含除の違いを理解させるのが一番だという意見も多く見ます。 たしかに文章題の問題文の解釈を手助けするには等分除と包含除の違いを図などを使って教えるのは有効だと思います。 ただ、それは割り算という計算そのものを判らせたことになるのでしょうか。

 

割り算という計算が何なのか、それは「除法」という名前にあると私は考えます。

「6割る3」というのは、6から3を何回取り除けるかという計算です。 3というのが「3人に等分に分ける」ということなのか、「3個ずつ分けたら何人に分けられるのか」というのは、割り算そのものを習った第一段階では、単なる文章題の解釈ではないでしょうか。 (後々に大きな意味を持ってくるというのは承知で暴論を述べています。)

 

「6から3を何回取り除けるかという計算」の実感には、タイガー計算機という機械式の計算機をガシャガシャいじらせてみるのが一番なのですが、出回っている使用可能な中古品にはアンティークとしての高価な値札がついています。

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タイガー計算機というのは、歯車を使った人力の計算機です。 さすがにこれを現役で使った世代ではないのですが、大学生時代に学科の倉庫でこれを見つけて試行錯誤で使い方を試してみて感動しました。 この機械は桁をずらしながらクランク・ハンドル で引き算をすることで、掛け算や割り算の計算をします。 なんかこう、ウィリアム・ギブスンの小説『ディファレンス・エンジン』の匂いのする機械です。

 

小数や分数に話が至る前にけっこうな文字数になってしまいました。 この話題、続きます。

 

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