おうぎ形や円の登場する平面図形の問題や、図形の回転移動の問題に関して、質問に来た生徒に指示すると自分で解法を見つけてしまうという解法の合言葉を紹介します。 例題は早稲田大学高等学院中学部の2010年(平成22年)の大問3番です。
質問に来た生徒に私が指示するのは単純な作業です。 次の順番で問題の図に書き込みをさせるだけです。
<作業1> 中心をさがせ! 見つけたら●を図に書き込め。
<作業2> 半径をさがせ! 中心の●を参考に半径を出来る限り見つけろ。 線が無ければ補助線を書き込め。 見つけた半径すべてに同じ長さを表す記号を書き込め。
<作業3> 中心角をさがせ! 同じ長さを表す記号を参考にして、正方形、正三角形、二等辺三角形などの形を見つけて中心角の角度を調べろ。
ヒントを出しながら、この順番に生徒に図への書き込みをさせて行くと、だいたいどっかの時点で「あっ、分かりました。」と言って戻って行きます。
「中心をさがせ。 半径をさがせ。 中心角をさがせ。」という手順はそれらの順番も含めて、おうぎ形や円の登場する平面図形の問題や、図形の回転移動の問題に対する解法の王道です。 なぜなら問題を作る先生が中心角や、半径や、回転の中心を隠すことで問題の難易度を上げているので、隠されたそれらを見つけさえすれば解く手順が見つかるのです。
ただし、この手順そのままでない問題がひとつあって、それが今日の例題に取り上げる「おうぎ形の回転移動」の問題です。
【問題】
中心角が 90° のおうぎ形を、図の矢印の方向に (a) の位置から直線上をすべらないように回転させます。 辺 AO がこの直線と2度目に垂直になるまで回転させるとき、次の問いに答えなさい。 ただし、円周率は 3.14 とします。
(1) 点 O が通ったあとの長さを求めなさい。
(2) おうぎ形が通ったあとの図形の面積を式を書いて求めなさい。
【解説】
(1) 点 O が通ったあとの長さ
おうぎ形が転がり移動の途中でどのように動くのか図にしました。 このおうぎ形は3種類の動きをします。 以下に動きの解説を書きますが、図を眺めて解説を読むだけでは動きの把握は難しいです。 転がり移動の把握と理解に最も良い方法は『実際に転がしてみる』に尽きます。 材料のおすすめはスーパーでお肉を買ったときのスチロールトレー、形を切り出すのが楽です。
書きました『 回転移動は食品トレーで体験して 』
動き1: おうぎ形の中心Oを回転移動の中心として、90度の回転をして青色で書いたO1、A1、B1の位置に移動します。
動き2: 今度は点B1を回転移動の中心として赤色で書いた90度の回転移動をします。 点Aが動く弧の半径になるのはABの長さです。
動き3: この移動が「中心をさがせ、半径をさがせ、中心角をさがせ」の手順から外れる部分です。 中心Oは直線からおうぎ形の半径と同じ距離の場所を水平移動し、その移動距離はおうぎ形の弧の長さと同じです。
と言う訳で、点Oが通ったあとの長さは、以下の2つの長さの合計です。
O1からO2が、半径4cm、中心角90度のおうぎ形の弧の長さ
O2からO3が、半径4cm、中心角90度のおうぎ形の弧と同じ長さの直線
4 × 2 × 3.14 ÷ 4 + 4 × 2 × 3.14 ÷ 4 = 8 × 3.14 = 12.56(cm)
(2) おうぎ形が通ったあとの図形の面積
求める面積は、 (a)元のおうぎ形、(b)直角二等辺三角形、(c)Aの軌跡が作る四分円、(d)台形の4つのパーツの合計で求められます。
それらのうち、(b)直角二等辺三角形と(d)台形は合体させることで高さが元のおうぎ形の半径で、幅が弧の長さの長方形になりますので容易に求められます。
難しいのは(c)Aの軌跡が作る四分円、中心角は90度ですが、半径は元のおうぎ形のABの長さです。 このABの長さそのものは32の平方根になるので小学生には求められませんが、ABの平方数(AB × AB)は<ひし形の面積>から求めることができます。 AB × AB = 4 × 4 × 2 = 32 です。
よって、 4 × 4 × 3.14 ÷ 4 + 4 × 4 × 2 × 3.14 ÷ 4 + AB × AB × 3.14 ÷ 4
= 4 × 3.14 + 8 × 314 + 8 × 3.14
= 20 × 3.14 = 62.8(cm^2)
ちなみに
点Aが最後に動くA2からA3までの軌跡はおうぎ形の弧ではありません。 この曲線に関する入試問題が有りましたので日を改めて書きます。
2021-12-22追記:
A2からA3の軌跡に関する記事はまだ書いていません。
転がり移動に関しては2021年四谷合判第6回の大問5の解説を書きました。