駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

問題のレベルに要注意・ライジング

昨日書いたスキーのたとえ話が分かりにくいと家人から言われました。 くやしいので分かりにくい原因を考えて補完するための文章を一気に書きました。 今度はゴルフにたとえてみました。

 

問題を解くということは、「問題」という情報のインプットに対して適切な「問題を解く」という行動を選択して、「解答」というアウトプットを得るという行為です。

つまり、学習するというのは、多種多様なインプットつまり「問題」に対して適切な対応を取れるパターンをどこまで増やして行けるか、努力するということです。

 

昨日、スキーでたとえ話をしたのは、「学習する」と「スポーツを練習する」という2つの行為について類似性を考え、その結果として効率的な学習方法のヒントを探す、という考察の結果です。 そのあたりの説明がまるっと抜けていました。

 

そもそも何かのスポーツを練習するというのは何でしょう? スポーツの本質は、日常では体験しない行動を出来るようになる、ということだと思います。 足に板を着けて雪の斜面を高速で移動するとか、耳かきの親玉みたいな棒で卵くらいの大きさの球を200メートル先に飛ばすとか、普通の生活ではまぁ絶対にしない行動ですよね。

競歩競技だって単に歩いているのではなく日常では絶対にしない体の動きです。 日常であの歩き方をしていたら近所の話題になるし、たぶん動画サイトに投稿されます。 (もっとも、南米かどこかで一日に数十キロを歩いて配達する郵便配達員がほぼ完璧な競歩の歩き方をしていたというのを子どもの頃に読んだ記憶は有りますが)

 

つまりスポーツの練習をするというのは、多種多様なインプット「状況」に対して適切な対応「体の動き」を取れるパターンをどこまで増やして行けるか努力するということです。

 

小学生が中学受験の勉強をするということは、まったくの初心者が何かのスポーツを始めて一人前のプレーが出来るようになるレベルまで到達するようなものだと考えます。 (御三家クラスに合格するということは人数比で考えると国体出場レベルまで到達するイメージかな。)

初心者がスポーツを習得する場合、その経路はいくつもあります。 ・・・スキーのたとえは分かりにくいらしいので、ゴルフで考えてみました。

 習得経路1: 打ちっぱなし練習場でひたすらフォームを固めて、それからコースに出る。

 習得経路2: いきなりコースに出て毎日1ラウンドを3ヶ月続ける。

 習得経路3: 練習場でゴルフ教室に入りつつ、コースでラウンド練習。

 習得経路4: 他のスポーツ経験者(例えば野球)がその応用でゴルフを覚える。

どの経路が最適なルートであるかは人それぞれです。 相性とか環境によって最適な解はまるで変わります。 勉強だって同じですよね。(この話は最後に、また。)

という訳で、学習法と対比させつつゴルフの話を書きます。

 

習得経路1: 打ちっぱなし練習場でひたすらフォームを固めて、それからコースに出る。

ゴルフのスイングという生まれて初めての動きを習得するために、一定の条件下で基本のスイングを繰り返して(心理学でいうところの)条件反応を形作る方法です。

Sapixのカリキュラムの中で数字替え演習の部分に類似性を感じます。 基本に忠実なフォームを叩き込むという点で良い方法です。

注意点としては最初のスイング練習を始める前の「振り方の知識」、つまり校舎の授業の解説をしっかり持ち帰らないと、宿題としてのスイング練習そのものが出来なくなることです。 それともうひとつ、毎単元のスイング練習をしっかりと完了させておかないと忘却曲線のスタート地点が下がってしまい、スパイラルフローの次のサイクルがやばくなります。

 

習得経路2: いきなりコースに出て毎日1ラウンドを3ヶ月続ける。

知り合いに南アフリカに赴任して、そこで初めてクラブを握り、ラウンドをしまくって上級者になって帰って来た人がいました。 ちょっとうらやましい。

有名私立中学に特化した受験塾で、保有する過去問とその関連知識「だけ」を演習させているところが有るらしいです。 また、低学年から「考えさせて、答えを出す楽しさに気付かせれば、後は自律的に学習する」系の学習塾も類似性を感じさせます。

注意点としてはこのような経路で得点力を確保するには膨大な経験を必要とすること。 5年生はもちろん4年生からのスタートでもこの方式だけでは厳しいと思います。

 

習得経路3: 練習場でゴルフ教室に入りつつ、コースでラウンド練習。

都市型のゴルファーにとっては王道のルートですね。 まず知識としてのスイングを若干の練習と共に習い、それの繰り返し練習をした後、コースで応用的な状況に慣れて行くという方法です。

受検塾で考えれば、まず知識としての解き方を若干の例題と共に習い、宿題で繰り返し練習をしながら、基本問題・練習問題・応用問題という順番で応用的な状況に慣れて行くという方法です。 四谷大塚など受験塾としては一番多いパターンだと思います。

注意点としては知識としての解き方、つまり解法テクニックに頼り過ぎないことでしょうか。 先の経路2を帰納的なアプローチとすると、こちらは演繹的なアプローチと呼べると思いますが、解法テクニックの仕込みは楽な分、危険です。 別の言い方をすれば、解法テクニックの適度な利用はとても効果を出せるということですが、必要なのはプレイヤーつまり生徒の現状と目標に応じた適切なアドバイスをすることです。 ゴルフでも「習うならティーチングプロかシングルまで。」というのが常識で、練習場で「親切な中級者」からのアドバイスを受けると地獄を見ます。 上級者と中級者のアドバイスの差は「相手の問題を正しく見極めて適切な改善案を出せるか」です。

 

習得経路4: 他のスポーツ経験者(例えば野球)がその応用でゴルフを覚える。

いとこがこれでした。 親戚で打ちっぱなし練習場に遊びに行ったときに、生まれて初めてクラブを握った中学生が(すごいスライスながら)練習場のネットの上段にバンバン球を当ててた。

これはもう学習法とか受験塾といった話ではないですね。 むしろ「なぜ有名校は学力試験で生徒を選別するか」という受験の本質に関わる話だと思います。 ひとつのことを極めた人は、隣接するジャンルにも強みを発揮できる、そういうことだと思います。

 

うわぁ、既に2600字を超えてしまいました。

まとめます。 長々とたとえ話を書いてしまいましたが、言いたいことは先に書いたこと。

 どの経路が最適なルートであるかは人それぞれです。

 相性とか環境によって最適な解はまるで変わります。 

 勉強だって同じです。

ところが受験の世界では、これが唯一と言い切る学習法がけっこう有るのですね。 

不思議です。

主人公はあくまで受験生本人ですから、最適解は一人ずつ異なると私は思います。

 

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