駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

旅人算:ふたりの距離のグラフ

旅人算>の<ダイヤグラム>に関連した問題で、出題者が正答率を下げたいと考えたとき、縦軸を「ある場所からの距離」から「ふたりの間の距離」に変えるだけで難易度がぐっと高くなります。 今日はこれの攻略法です。 例題は 大妻の2010年(平成22年)から大問の9 

 

逆に言えば、出題者の先生が問題の設計に使った普通のダイヤグラムを再現すれば、問題の難易度は大幅に下がるということです。 

 

【問題】

兄はA地点から走り始めて、途中で一度休み、その後休む前と同じ速さで走り続けました 一方、妹は兄がA地点を出発してからしばらくたった後に、A地点を自転車で出発し、B地点で兄においつきました。 グラフは、兄がA地点を出発してからの時間と、兄と妹との距離の関係を表しています。 このとき、

 (1) 兄が走る速さは 毎分何m ですか。

 (2) A地点からB地点まで 何Km ありますか。

 

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【解説】

この問題に限らず、また算数、理科など科目にも限らず、グラフを取り扱う問題で生徒の耳にタコができるほど繰り返している解き方のポイントがあります。

 ポイント1: 線の端っこに注目

 ポイント2: 縦軸・横軸に数字のあるポイントに注目

 ポイント3: そこで何が起きているかメモを書き込む

ふたりの距離のグラフ問題では、真下に時間の目盛りをそろえて普通のダイヤグラムを書き換えることから始めます。 その時には元のふたりの距離のグラフで線が折れ曲がっているポイントに注目して、そこで何が起きているかを考えながらダイヤグラムを作って行きます。 

  一定で増加→兄が遠ざかっている

     増加が止まった→兄が休んだ

     一定で減少→妹が出発した

     減少がゆるやかに→兄が走り始めた

     距離がゼロに→妹が追いついた

 

(1)

ダイヤグラムが書ければ、これはとても簡単です。  に注目して割り算をするだけです。 

途中式の中でわざわざ  4 Km = 4000 m と書いていますが、これは  

『途中式や考え方の記述が必須になっている場合、説明の無い数字は書かない。』 

というのが原則だからです。 まぁ、単位の換算が抜けただけで減点されることは無いと思いますが、生徒の過去問演習を添削していると「暗算した数値をいきなり使っている」というミスを指摘することが多いので、自分の書く解答例では徹底しています。 

 

(2)

大問の後の方で解き方に迷ったとき、「(1)で求めた数字を使えないか考える」という原則の他に、「問題文に使ってない数字が残ってないか考える」というものがあります。 これを私は

『問題文と茄子の花、千にひとつの無駄も無し』 と称しています。 

この問題で(1)で求めたのは兄の速さ、問題文中でまだつかっていないのは のポイントの 38分という時刻と 2.8 Km という距離です。 

それらの情報とダイヤグラムを合わせて見れば、<旅人算・追いつき>で までの時間が求められるという解答への道筋がすぐに見つけられるはず。 

の距離は、 から 2.8 Km = 2800 m

ここから、妹が から まで移動した距離が分かるので、妹の速さは

( 4000 - 2800 ) ÷ ( 38 - 33 ) = 240 

旅人算・追いつき>で、追いつくまでの時間が

2800 ÷ ( 240 - 160 ) = 35 (分)  と分かります。

妹は AからBまで 5 + 35 = 40 (分) で移動したことになりますので、

240 × 40 = 9600 (m)   よって    9.6 (Km) 

 

御三家・難関校に合格するレベルの受験生なら、わざわざダイヤグラムは書かなくて良いです。 時間がもったいないから。 でもその生徒たちは書けと言えばさらりと書けるはず。 

 

この問題を「解けるようになりたい」生徒の場合は、かならずダイヤグラムを書いて考えて欲しいです。 手間を惜しんで元の<ふたりの距離のグラフ>を睨むだけで考えようとする生徒は、安定して得点できるようにはなれません。 

その意味で不満があるのが各校の入試や問題集などの印刷レイアウトです。 

  右サイドバーの「お勧めサイト(はてなブックマーク)」にある

  「四谷大塚 中学入試過去問データベース」から

  実際の入試問題のPDF化されたデータが入手できます。

  受験を検討している学校についてはぜひ見て欲しいのですが、

  印刷レイアウトは学校によって大きな差があります。 

 

<ふたりの距離のグラフ>問題で、直下に目盛りを合わせて普通のダイヤグラムを書くスペースの空けてある例って、ほぼ皆無なんです。 

問題集の解説を見ると元の<ふたりの距離のグラフ>に重ねるかたちでダイヤグラムを書き込んでいるものも多いですし、それすら無くて解説の文章だけで動きを説明したものも有ります。 

 

 ということは「元になったダイヤグラムを縦の位置を合わせて書いて考える」という解き方は一般的ではないのかも知れません。 なぜだろう? 効果があるのに。 

 

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