駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

文章による算数の解説

某大手の受験塾で講師を始めた頃、解説を読んでも分からないと言って質問に来た生徒に対応しながら、ふと考えた。 テキストの解説を一対一で教えると、なぜ「分かりました」と言いながら戻って行くのだろう? 算数の解説ってどうしてこんなに分かりにくいのだろう。

一部に例外はありますが、参考書に載っている解説の多数派は「AだからB,よってBからCが求められ・・・」という文章をメインとした説明です。 補助的に図や表が使われていても、そこには「思考の流れ」は示されて無く、流れを説明する主体は解説の文章で、図や表はあくまで補助の立場です。

 

私自身の中学受験の勉強から40年経って、教える側になって思ったのは「相変わらず参考書の解説がわかりづらいなぁ。」ということでした。

 

配属された校舎に居たベテラン講師は、授業中にやる確認テスト全てに手書き解説を作っていました。 新任の私にはとても参考になるものだったのでお礼を言うと、

「テストに付いてくる解説は分かりにくいし、これ作って配ると質問に来る件数が格段に減るんでかえって楽なんだよね。」と言っていました。 

それと同時に、

「結局、テキストの解説の通りに授業をすすめるのが『プロの講師としては』正解なのかも知れないなって思う時がある。」とも言っていたのですが、その時には意味が分からなかった。

意味が分かったのは何年後だったか、ベテラン講師が春夏冬の講習会の分も含めて全学年の確認テストに対して手書き解説をコンプリートした翌年・・・

カリキュラムの改訂が有り、確認テストも全面改定。 

校舎の講師皆が活用させてもらっていた手書き解説も、ファイルごとばっさり廃棄。 

端(はた)で見ていただけの私にもこれはショックでした。 

 

手書き解説を示した方が質問に来る生徒が少ない。 つまり、分からないって言う生徒が少ないということ。 得点力を上げるのに効果があるなら、なぜそれを使わないのだろう? ずうっとそれを考えています。 

 

当然、まず思い付くのは『印刷の手間』

図や計算の順番を矢印で書き込んだ表などを多用すれば、とうぜん版下制作の費用はかさみます。 でもそれが主たる理由とは思えない。 本当に効果が有るならば金は惜しまない世界ですから。 

 

『講師間のズレの防止』?

いくらでもバリエーションのあり得る図に対して、数式を含めて文字で表現した解説の方がゆらぎは少ないかなとも思います。 授業で取り扱う場合にも、解説の通りに話をすれば講師間のズレも防止できる・・・かも?

 

『証明問題の準備・正確な記述』?

やがて数学で学ぶことになる「証明問題」、それへの解答は「文章で」「正確に」「思考の流れを記述する」ことです。 それへの入り口? いやいや、どんなに正確でも、生徒の頭に解き方が残せなければ意味が無い。

 

『文章の方が分かる人が居る』?

たとえば、ちょっと複雑な機械の操作マニュアルを受け取るとき、あなたはどちらの方が分かりやすいですか?

A:スタートから枝分かれしたフロー図で、ケース毎に操作が指示されてる

B:ひとつの操作毎に一行を使って逐次的に文章で指示されている

私はだんぜんAのフロー図です。 スタートからゴールまでの全体像が鳥瞰できるし、必要な情報だけをたどって知ることができますので。

でもBの方が嬉しいという人も居るのですね。 理由は、何をすれば良いか明確に示されているので迷わないで済むからだそうです。 

なるほどね、そういう好みの人が居るのも理解はできます。 そういう人には算数の解説も文章の方が良いのかな? 迷いの無い一本道だから。 

 

すみません、今日の話は明確な結論は無いです。

これがベスト!というのは人それぞれですから。

ただ、私は図や表を多用した手書き解説を使って行きます。

理由は2つ有ります。

 

理由その1:

問題の解説は、解説のしやすさのためにあるのではなく、生徒が解けるようにするためにあるのだから。

試験問題に立ち向かう時、生徒は余白を縦横の2次元の空間として使うことができます。 余白に「AだからBで、するとCが分かって・・・」などと文章で書きながら考える者はいません。 せっかく2次元の空間を使えるなら、縦横の配置そのものが解法になっている書き方を覚えた方が絶対に有利です。

komazawajuku.hatenablog.com

理由その2:

解説の記述がどんなに正確であっても、試験中に使えないのでは意味がありません。 証明問題の解答のような「AだからBで、するとCが分かって・・・」という一本道の考え方をいくら勉強しても、それでは足りません。 

試験問題に向かった時に必要なのは「知っている事からスタートした枝分かれ」と「知りたい事から遡る枝分かれ」の両側から考えを進めて、その両者が握手できるポイントを見つけることです。

図の上に思考の流れを点線矢印で示したものは、これを鳥瞰的に把握できます。  komazawajuku.hatenablog.com

 

 

 

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