昨日は世田谷学園の問題から維管束の配置に関する設問を取り上げて<覚え方>のコツを書きました。 今日は同じ問題から<蒸散>に関しての<解き方>のコツを書きます。 世田谷学園の2006年(平成18年)第1次試験の大問1 単元は<生物><植物><蒸散><実験>
【問題】
植物のからだの表面から水が蒸発するしくみを調べるため、次のような実験を行いました。 あとの問いに答えなさい。
<用意したもの>
目もりをつけた試験管・・・・・5本
同じ種類の植物の枝 (茎(くき)の太さや長さ、葉の面積がほぼ同じもの)・・・・・4本
枝と同じくらいの太さのガラス棒・・・・・1本
<実験方法>
図のように5本の試験管(A~Eとする)に同量の水を入れ、A~Dには条件を変えた植物の枝を、Eにはガラス棒をさして、風通しの良い日かげに置き、半日後、それぞれの試験管で減少した水の量を比べる。
A:葉にも茎にもワセリンをぬっていないそのままの枝をさす。
B:葉の表側にワセリンをぬった枝をさす。
C:葉の裏側にワセリンをぬった枝をさす。
D:葉の表側と裏側両面にワセリンをぬった枝をさす。
E:枝と同じくらいの太さのガラス棒をさす。
<実験結果>
図を参照。(実際の入試では問題文の中に結果の表が印刷されていました。)
問1 ・・・赤く染まる場所に関する質問。 昨日取り上げたので省略します。
問2 B、C、Dでワセリンを用いたのは、葉のある部分をふさぐためです。 その部分の名称を答えなさい。
問3 この実験は、植物の何というはたらきを調べる実験ですか。
問4 茎の表面から蒸発した水の量はいくらですか。 目もり数で答えなさい。
問5 試験管Bを誤って割ってしまい、減少した水の量をはかることができませんでした。 はかることができた場合の水の減少量を、目もり数で答えなさい。
問6 水の蒸発は、どの部分でもっとも多く行われているといえますか。 次の(ア)~(ウ)から選び、記号で答えなさい。
(ア) 茎 (イ) 葉の裏側 (ウ) 葉の表側
問7 水をからだの表面から蒸発させることで、植物は体内の水分量の調節、根からの吸水量の調節とあと1つ重要な調節をしていますが、それはどんな調節でしょうか。 また、そのことに関連している文を次の(ア)~(エ)から選び、記号で答えなさい。
(ア) 夏休みに都市では打ち水(道路などに水をまくこと)をするところが増えて、ニュースになっていた。
(イ) 丹沢の山は、相模湾からの湿った空気がぶつかり、雲をつくることが多い。
(ウ) 夏の朝、草原を散歩したら足がぬれてしまった。
(エ) 寒い朝は、はく息が白くなる。
【解説】
解説・・・をする前にひとこと。 集団授業の塾だと見落とすのかな、導入授業の冒頭でワセリンとは何か説明しない先生が世の中には居るみたいですね。 6年生から質問を受けたときに、ワセリンてのはベタベタした物で、それで植物の表面をおおって気孔をふさいだらどうなるかという実験なのだよと説明すると、わぁそうだったんですかと言う生徒が居ます。 なにをやっているか分からなければ授業を聞いても生徒はちんぷんかんぷん、学力がつく訳がない。
問2 部分の名称 気孔
問3 はたらきの名称 蒸散
<蒸散>の実験についての問題は、表を書き加えて整理すれば簡単に解けます。
手順1: 試験管の図、または蒸散量の表に枠を書き足して部位別の表にする。
手順2: 蒸散または蒸発する場所の名前を書く。「表」「裏」「茎」「水面」など。
手順3: ワセリンを塗ったり、葉を切り取ったなどの記述に従って ×印で不要な枠を消す。
手順4: 分かるところから順番に、計算した数値を書き込んで行く。(上の図の青文字)
これでおしまい。 たったこれだけで問題は解けてしまいます。
問4 茎の表面から蒸発した水の量
試験管Eの水の減少量は水面からの蒸発分です。 これを試験管D ( 茎からの蒸散量と水面からの蒸発量の合計 ) から引き算したものが答えです。
したがって 3 - 1 = 2目もり
問5 試験管Bの蒸発した水の量
詳しい説明は不要でしょう。 赤色で示した表の枠と×印が正しく書ければ、青色の矢印の順番に数字を計算するだけです。
したがって 28目もり
問6 蒸散量の多い場所 (イ) 葉の裏側
この問6は設問の順番を含めて出題者の「やさしさ」を感じさせます。 気孔が多いのは葉の裏側、だから蒸散量の多いのも葉の裏側ということは覚えている生徒が多いですから、ここで問5の答えを見直してケアレスミスに気付いた受験生も居たのではないかな。
問7 調節するものの記述は 植物の体の温度の調節 体温の調節 など
動物が汗をかいて体温調節するのと同様に、植物も蒸散を使って体温の調節をしているということが書かれていれば正解です。
関連している文は (ア) 夏休みに都市では打ち水(道路などに水をまくこと)をするところが増えて、ニュースになっていた。
選択肢の(ア)だけが水の蒸発による熱の吸収を述べています。 ちなみに他の選択肢はすべて水蒸気(気体)が液体の水または氷になる現象です。
という訳で、<蒸散>の問題は表を正しく書ければ難しい問題ではありません。
出題形式のバリエーションとしては、以下のようなものが有ります。
☆試験管と枝全体をビニール袋で包んで内側に水滴が付くことを考察させる
☆試験管の水面に油を浮かせたものを混ぜる
☆葉にワセリンをぬるかわりに切り取ってしまう、など
どれも蒸散または蒸発する部位が正しく把握できれば足し引きの計算だけで正解が出せます。
この単元に関しては気になっていることがひとつ有ります。 それは実際の入試問題や模擬試験の問題を見ると、整理するための表を書き足すスペースが空いていないものがけっこう有ることです。
なぜ、表を書き足すためのスペースを空けてないのだろう?