植物の「茎(くき)」のつくりを教えるとき、私は仕組みや名前の由来などの情報をくっつけて教えています。 思い出しやすくするための<情報の冗長化>です。 世田谷学園の2006年(平成18年)の第1次試験から設問を抜き出しました。
【問題】 部分的引用のため問題文を若干修正しています。
赤インクを混ぜた水の入った試験管に葉のついた植物の枝をさして1日置いた後に、茎の断面を観察しました。 赤く染まった部分はどこですか。 図の ア~エ から1つ選び、記号で答えなさい。
【解説】
覚えていれば、答えは明快です。 ウ
ちなみに、設問にはありませんが名称は 道管 です。
今日は解き方ではなく、覚え方の話です。
植物の茎のつくりを説明するとき、私は図を書いて イ と エ の名前から生徒に質問します。
イ 形成層
じゃぁさ、形成層って何? 植物はここで形(かたち)を成(な)しているんだ。 植物はここで成長しているんだ。 植物はここで外へ外へと大きくなって行くので、夏と冬の成長の早さに大きな差がある場合、「年輪」ができるんだ。
エ 木部(もくぶ)
木部って何? 木部ってのは (机を指の関節でコンコンって叩いて ) 死んだ組織なんだ。 死んだらどうなる? 乾くよねー。 植物が地中から水を吸い上げるってのは、乾いた所に水が染み込んで行くはたらきなんだ。 だから赤インクで染まるのが外側か内側かって聞かれたら・・・そう、内側なんだ。
補足:「乾くよねー」ってのはちょっと乱暴ですが、勢いで突っ走ります。
毛細管現象の話
乾いたティッシュの端を水につけるとどうなる? 水がティッシュを這い上がって来るよね。 水がなにかを湿らせる力って、ものすごく、ものすごーく強い力なんだ。 何10メートルも高さがある木があるよね。 そのてっぺんにも緑の葉が茂ってる。 そこまで水を運ぶのもこの力。
補足:植物が水を吸い上げるのはそこが乾いているから、という知識を強調しておきます。 これにより<蒸散>の目的を学ぶときに理解を助けます。
大気圧の話(時間があれば)
授業時間に余裕があれば、ポンプで水を吸い上げる話をします。 水管の水を持ち上げる力はまわりの水面に働く大気圧であること。 真空ポンプでは10メートル以上の高さには絶対に吸い上げられないこと。 大気圧と水管中の水の重さが釣り合うポイントがこの高さを決めること。 このような話で<植物>と<気象>の知識を紐付けて、知識の冗長化をすすめます。
光合成と消化の再確認
光合成のフロー図の再確認をはさみます。 目的は、光合成で作られるのがでんぷんであり、でんぷんは水に溶けないということの再確認です。
既に<消化>の単元を学習済みの場合、でんぷんを人間は唾液中のアミラーゼで糖に分解(消化)して水に溶けるかたちで吸収するということも確認しておけると、次の話になめらかにつながります。
道管と師管の名前
内側の管が根で吸収された水分と肥料を運び、逆に外側が光合成で作られた栄養を運ぶということがわかった。 つぎは、どっちが道管で、どっちが師管かという名前の話。
師管の「し」という字は教師の師という字だけれど、昔は「たけかんむり」が付いた漢字だったんだ。 「たけかんむり」の付いた篩という字の訓読みは「ふるい」、物を大きさで分ける道具の篩(ふるい)のこと。 師管(しかん)も昔は篩管(ふるいかん)とも呼ばれていたんだ。
なんで篩管と呼ばれているかというと、ふるいのようなつくりが管の途中にあるから。 光合成で作ったでんぷんを植物は水に溶ける糖のかたちで運んでいるから、溶け残ったでんぷんを溶けるまで留め置くため。 そういう仕組みです。
葉の葉脈
ついでに葉脈と呼ばれる葉の維管束も確認しておきましょう。 葉脈にも道管と師管がありますが、さて道管は葉の表に近い方にあるか、裏側に近い方にあるか分かるかな?
これも「しくみ」で考えれば楽に覚えられる。 道管を通って運ばれてきた水分はどこから外に出るかといえば、気孔。 その気孔は葉の表側と裏側のどちらに多いかといえば、裏側。 もしも道管が裏側に近い方にあったら、水分はすぐに外に出て行ってしまう。 表側に近い方に道管があれば水分は葉の中をたっぷり潤してから外に出て行けるわけ。 だから、道管があるのは葉の表面に近い方です。
<植物のつくりとはたらき>は、多くの塾で小5の上期に学びます。 サピックスとグノーブルが春休み前、栄光ゼミナールと新演習を使っている塾はこれから。 四谷大塚準拠塾は今日の組み分けテストでの出題範囲ですね。 さて、維管束のつくりの問題は出るかな?