駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

叱ると褒める:その2

昨日の続きとして、何を叱るか、どうやって褒めるか、感情的に叱ってしまうことに歯止めをかけるには、といった項目に対しての私の意見を書きます。 昨日も書いたように生徒は十人十色、叱り方も褒め方もひとりひとり違うはずです、違うべきです。 項目の中にひとつでもお役に立つものが有れば幸いです。 

 【叱るのは生徒がすぐに直せることを】

これは単純な話です。 「成績が下がった」とか「そんなことで志望校に合格できるか」とか「頑張ってない」など、子どもが何をしたら叱られなくなれるのか分からないような抽象的な叱り方をするのでなく、「○○をしなかったから叱られた」と明確に自覚できるようにしたいです。 

 

「学習予定表の作り方」

曜日ごとに課題を決めた一週間の学習予定表を作る場合、「火曜日には算数を2時間」というように勉強時間を決めるのではなく、「計算を1ページ、基本問題の演習と直し、テストの解きなおし」というように具体的な内容を決めたいです。 

それをしなかった場合に明確に叱れるだけでなく、時間だとサボった場合にそのまま叱られるだけでお終いになるのに対して、内容ならば万が一サボってしまった場合にも取り戻しを自分の努力で出来ます。 

 

「予定未達成の叱り方」

最初の頃は、その日の課題を終わらせていなかった時にすぐに叱るのも必要でしょう。 子どもがサイクルに慣れて来たら、未達成に対してどうするか自分で宣言させて、それをしなかった場合に叱責するという形に移行できると自律性が育成されます。 

未達成をその場で叱らずに追っかけ実施を許すと、単なる課題の先送りを子どもがするのではないかという心配も出るかもしれません。 しかし本来はつらくなるはずの追っかけ実施を容易に出来てしまうとすると、何か原因があるはずです。 予定表が楽すぎるとか、手を抜くなど。 従って、それへの対応はまた別の方策で出来るはずです。 

 

「学習予定の増やし方」

予定表を時間で決めて「基本問題終わったの?じゃ練習問題もやりなさい」という流れは避けたいです。 塾から出ている宿題を満たせるようになったなら、次は質を良くしたいです。 

質とは「きちんと演習をして、しっかり間違えて、それを直して、解けるようになっているか」です。 大切なのは間違えて直しをやっていること。 小3までならともかく、小5や小6になって宿題の演習で「一発で全問正解」というのは有り得ないです。 有り得ないはずなのに、けっこう居ます。 

私は集団クラスを持ったときに、宿題で出した範囲から1ページをやらせる確認テストというのをやることが有ります。 定例的にやらせる場合は数字替え版を作ったりしますが、抜き打ち的にやるならそのまんまのコピーでも十分に使えます。 

 

「解説の丸写しの叱り方」

後半に解答解説がある問題集で、その解答解説部分を切り取って隠してしまう保護者様がいらっしゃいます。 私はこれには反対です。

小6の秋から始める過去問演習では「そもそもズルを不可能にする」という意味で保護者管理にして欲しいのですが、宿題の演習では目的の違いから生徒が自由に解説を参照できるようにしておいて欲しいのです。 丸写しを出来ないようにするのではなく、抜き打ちテストのような別の方策で歯止めをかけた方が成績は伸びます。 

 

「テスト内容の叱り方」

点数や偏差値でなく、「正答・誤答・空欄」に対しての叱り方・褒め方についてです。 

突き詰めて言えば、間違えていけないのは入試本番だけで、そこに至るまでのテストは全てそのための「手段」にすぎません。 しかし同時に校名付きコースへの入会審査を兼ねたオープンテストなどですと「目的」としての意味も大きく持ちます。 これが怖い。 

テストを「手段」と見るか「目的」と見るかということは、叱り方に強く影響します。 「なんでこんな簡単な問題を間違えたの!」と叱ったら、子どもは次のテストで空欄を残すようになると思いませんか。 解き方を間違えた痕跡は、私から見ると宝の山です。 その生徒がどこまで分かっているか、どこから分からなくなっているか、何を教えれば解けるようになるか、膨大な情報がそこに詰まっています。 

痕跡を分析できる機会が確保できるなら、間違いを叱るのをぐっと我慢して、空欄を残すことの方を叱るのが成績向上への近道です。 

 

「叱らない方が良いのは分かるけど・・・」

いろいろ書いて来ましたけれど、でもやっぱり成績が落ちたのを見ると感情的になってしまいますよね。 誰でもそうだと思います。 

私自身、自分の子どもに対してはけっこうひっぱたいて来ました。 ただし厳しく叱る際には2つのルールを自分に課して・・・、課そうとして来たつもりです。 

ルール1:自分の感情メインで叱らない。 叱られる子どもの感情を考えて叱る。 自分の感情メインで叱ってしまった時は、後で思いっきり落ち込み、反省する。

ルール2:「Beat and hug」で自分に歯止めをかける。 泣きじゃくる我が子が落ち着くまで必ず抱きしめる。 

厳しく叱ったらすぐに抱きしめるというのは是非やって欲しいです。 子どもの存在そのものを否定するという最悪の叱り方を回避できますので。 それに・・・

お坊ちゃまをお持ちのお母様、お嬢様をお持ちのお父様、子を思いっきりハグできる期間は残り少ないですよ。 今のうちですよ。 すぐに、思いっきり逃げるどころか、蹴りを入れてくるようになりますよ(体験談?)。 

 

うわぁ、叱り方についての意見だけで2200字を超えた。 褒め方について続けます。 

 

「目標は小分けにして、ほめる回数を増やす」

記憶中枢と脳内麻薬の分泌器官はごく近くに有ってうんぬんかんぬん・・・

書き始めるときりが無くなるので、以下省略。

 

「ご褒美は抽象的な方が良い」

具体的な物を使うと、ご褒美のインフレが起きます。 人間は刺激に対して慣れてしまう、ゆえにより強い刺激を欲するようになるというのは少年ジャンプの漫画に登場する敵を見れば分かります。 最初は単に強い人が敵になっていたのが、超人が登場し、異星人が登場し、神様が登場し、もう訳がわからんことに。 

ご褒美は抽象的な方が良いです。 その最も良い形が(マズローの欲求5段階説を引用するまでもなく)、「人から認められること」ですね。 子どもにとって絶対的な存在である保護者様に褒められること、これに勝る「承認欲求」はありません。

 

人から認められることに関連して、自分自身の中学受験体験(47年前)を思い出しました。

当時、駒沢公園の近くに御三家合格者を輩出させた深沢塾という算数専門の個人塾があって、そこでやっていたのが「ごほうびとしてのカード」でした。  カードと言ってもリングでまとめる単語カードです。 宿題をやって行くと「努力賞」、授業中のテストで高得点を取ると「優秀賞」というゴム印を押したカードを一枚くれました。  たったそれだけのことでしたが、オペラント動機付けにおけるトークンとしては効果が高かったと感じています。  
なんだ、そんな事?と思われるかも知れませんが、通塾カバンの持ち手にこのカードの束を2つ3つと下げていると他の塾生からの羨望の視線が誇らしく、カードを獲得するために今がんばる、という気持ちになりました。  子供にとって最も嬉しいのは保護者や同級生や先生などの周囲の人から認められる事だと思います。深沢塾のカードは、それを形にしてくれていました。 

 

うわ、3000字を超えた。 叱ること褒めること、つまりメンタル管理に関連してあと一個だけ。

 

中学受験は総力戦です。 東京・神奈川の2月1日だけで3万7千人の6年生が「どれだけ頑張れたか」の競争をします。 

塾に通わせている場合、そこでの様子は家庭内とけっこう違っていたりして、叱ったり褒めたりする重要な材料になることが有ります。 特に集団クラスの中では意外な一面を見せたりするのですが、生徒の個性は十人十色、担当の先生が様々なエピソードの積み重ねから生徒の個性を把握するにはかなりの時間がかかります。 

小6のクラスだけで20を超えるような大規模校舎を持つ塾って有りますよね、しかも成績で毎月クラスの上がり下がりがある塾。 そういう塾で数字に出ないメンタル面に対してどのような相談が出来るのか、12月に最後の模擬試験が終わった後の頑張り(伸びしろ)をどのように受験計画に織り込む相談が出来るのか、すごく興味があります。 

 

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