叱ると褒める。 正解の無い問題です。 最適な対応はひとりひとり違い、お子様のことは保護者様が一番良く分かっていらっしゃいます。 ご家庭内の「叱ると褒める」に対して私にできるのはあくまで助言までです。 ですが、これまで生徒を見て来て感じていることを書きます。
中学受験に向けた親子間の「褒める・叱る」に対しての、私からの提案です。
・ テストの点数や模試の結果は褒めるために使い、叱るためには使わない。
・ 叱るのは、子どもがすぐに直せること。
【テストについて】
・ 褒めるためのネタをいろいろな方向からの視点で探して、大げさに褒めて欲しいです。
点数はテストそのものの難易度によって上下します。 上がったときには大げさに褒めましょう。 下がったときには点が下がったことそのものを叱らないで下さい。
偏差値については上がったときはもちろん褒め、加えて偏差値が変わらなかったときも褒めるチャンスです。 だって偏差値が変わらなかったということは、同じ偏差値の生徒達と同じレベルの勉強までは出来た、頑張った、ということですから。 たとえ下がった場合でも、下がり幅が2とか3だったら叱ってはいけません。 2や3の下がりで数字だけを見て厳しく叱るのは無意味です。
【偏差値について】 ・・・ご存知の方は読み飛ばして下さい。
ある生徒が平均よりも上か下か、そして平均からのズレはどのくらいか、というものを数字にしたのが偏差値です。 難しく言うと、テストの難易度等による点数のばらつきを、統計的な処理により標準化したものが偏差値です。
平均よりも上か下かですから、どのような生徒達が受験したかにより偏差値の値は大きく変わります。 同じひとりの生徒がいろいろな模擬試験を受けた場合、優秀生ばかりを集めた試験での偏差値は低く出ますし、幅広い学力の受験生を集めた試験では高い数値がでます。
学校に対しての偏差値と合わせて、実際の数字で見てみましょう。 洗足学園の2月1日の80%偏差値(日能研ではR4偏差値)は、このような数字です。
サピックス:54 四谷大塚:62 日能研:63 首都圏模試:73
たとえばサピックス模試で偏差値54の生徒が洗足学園の2月1日の入試を受けた場合、「統計的には」5人中4人が合格した、ということです。 そして、同じ生徒が首都圏模試を受験した場合、理論的には73という偏差値が出るはずです。
塾間の偏差値の数字を比べるというのは、比べるという行為そのものが無意味です。 母集団が違うだけですから。 模試から得られる情報で重要なのは志望校に対する合否判定と、偏差値の傾向(上がり調子なのか、維持なのか、下がり傾向なのか)です。
先に、2や3の下がりで数字だけを見て厳しく叱るのは無意味と書きました。 というのも、その回に苦手な設問が出たかという運不運だけで偏差値の値は5くらい普通に変動するからです。
それじゃぁ、そんな偏差値なんて無視して良いのか、というと・・・
【偏差値との付き合い方】 ・・・ご存知の方も、ここは読んで欲しい。
塾の先生はこういう言い方をよくします。 「たかが偏差値、されど偏差値。」
「たかが偏差値」とは、
偏差値は、2や3、へたすりゃ5くらいの変動は本質的に有る数値ですから、回ごとの変動に一喜一憂しすぎてはいけない、ということです。
「されど偏差値」には、要素が3つあります。
その1:上がり下がりの傾向は重要な情報です。 同じ試験を続けて受けて、傾向として下がっているという場合は、同レベルの受験生から置いて行かれているという事ですから、とても危険なサインです。
その2:回ごとの変動があまりに激しい場合、模擬試験であれ組み分けテストやマンスリーテストであれ、単元ごとの習得度合いの差が非常に大きいことを示している可能性があります。 極端に苦手な単元が残っているというのも危険なサインです。
ただし、組み分けやマンスリーテストでは、新年度初頭にメンバーが大量に加わったり、6年生の9月頃に校名付きコースのメンバーがごっそり抜けたりすると、個人の偏差値は(学力が変わってなくても)変動しますので注意が必要です。
その3:受験校の選定に対して、偏差値の情報を無視すると・・・詳しく書く必要は無いですよね?
【では何を叱るべきか?】
叱るのは、子どもがすぐに直せること。
大人なら、営業成績が悪いことを叱られただけで対応が取れるかも知れません。 たとえ転職したばかりで右も左も分からない業務でも、「おまえは馬鹿か? そんなもんは自分で考えろ。」と言われれば、やらなくてはいけないのが大人。(ちょっとブラック企業の匂いもしますが)
でも、10歳や11歳の子どもにそれを望むのですか?
「なんでこんな点を取った。」
「点が低いのはやる気が無いからだ。」
「やる気は有るって? じゃ、この結果は何なの。」
成績を上げるためには、そして合格を勝ち取ってお子様と共に幸せをつかむには、点が低いことを叱るだけで無くその先が必要ですよね。
叱るのは、子どもがすぐに直せること。 そこまで叱る側がブレークダウンしてあげられれば、ベストです。
じゃ、具体的に何をやるんだ、 とか
そうは言っても悲惨な点数を見たらカッとしちゃうよね、とか
まだまだ書きたい事がいっぱい有るのに、既に2000字を超えて長くなりすぎました。 それらについては、明日、また。
2018-06-07 叱ると褒める:その2
2019-03-03 叱ると褒める:その3