駒澤塾:中学受験の算数・理科

中学受験の算数・理科を中心に書いて行きます。駒澤が旧字体なのは検索をしやすくするためです。

塩水算にL型ビーカー図を使う例

<濃度(塩水算)>にL型ビーカー図を使う例として<還元算>との複合問題を探していて<還元算>ではないけれど良い問題を見つけました。  洗足学園の2008年(平成20年)の第3回入試から、大問4番です。 

 

 【問題】

3つの容器A、B、C があります。 容器Aには4%の食塩水300g、容器Bには10%の食塩水600gが入っています。 また、容器Cは空です。 このとき、次の3つの操作を順に行います。

 操作Ⅰ 容器Aから容器Cにgの食塩水を移します。

 操作Ⅱ 容器Bから容器Aにgの食塩水を移し、よくかき混ぜます。

 操作Ⅲ 容器Cの食塩水をすべて容器Bに移し、よくかき混ぜます。

このとき、次の問いに答えなさい。

(1) gは 120gとします。

① 操作Ⅰ、Ⅱを順に行うと容器Aに入っている食塩水の濃度は何%になりますか。

② ①のあと、操作Ⅲを行うと容器Bに入っている食塩水の濃度は何%になりますか。

 

(2) 3つの操作を順に行ったところ、容器Aと容器Bの食塩水の濃度が同じになりました。 gは何gですか。 なお、この問題は解答までの考え方を表す式や文章・図などを書きなさい。

 

【解説】

2月の上旬などに有名校の入試問題が手に入って解いてみようとするとき、私たち講師がまず何をするかご存知ですか? ばっと手を伸ばして、裏紙を手元に引き寄せるのです。

生徒たちに良く言います。 「先生だって紙に書いて考えるんだぞ」って。

 

今回の例題も、問題文を読みながら<L型ビーカー図>を書いて行き、最後の行を読み終わった時には矢印で結んだ4段の図を書き終わりました。 その時に書いた図はかなり汚いものです。 きれいさよりもスピード重視で、自分が読めるギリギリの汚さで十分です。 以前、ミスを防ぐための注意事項として「途中式は、10分後の自分への手紙」と書きましたが、このような問題を解くためのメモ書きはいわば「30秒後の自分への手紙」かも知れません。 

さすがにそれでは何がなにやら分からないので、書き直したものを載せます。 左側が問題文をL型ビーカー図のフローにしたものです。 (ちなみに右半分は今回の問題の計算です。 <濃度てんびん>を使うと、たったこれだけの計算で答えを出せてしまいます!)

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(1) アが120gの時

① 操作Ⅱまで終えた容器Aの濃度

複雑に思える操作ですが、フロー図で整理してみると操作Ⅱで行われる混合は

「容器Aに残っていた濃度4%の食塩水が 400 - 120 = 180g 」

「容器Bから来る濃度10%の食塩水が 120g 」 だと分かります。

あとは<濃度てんびん>を組んで、  6.4% 

② 操作Ⅲまで終えた容器Bの濃度

これも同様に

「容器Bに残っていた濃度10%の食塩水が 600 - 120 = 480g 」

「容器Bから来る濃度4%の食塩水が 120g 」 だと分かれば、

あとは<濃度てんびん>を組んで、  8.8% 

 

(2) 最終的にAとBが同じ濃度になるときの

「<還元算>で最終的に何かが同じになる問題」を見た瞬間にニヤリと笑顔になれる受験生なら難しくない問題です。 「<容器と水量>で同じ深さになる問題」も同じで、「合計の量」を利用するのがポイントなのです。 

今回の「合計の量」は「AとBに含まれる食塩の重さの合計」です。 この値は最初っから最後まで変わりません。 最初は容器Aに12g、容器Bに60gで、合計は72g ということが暗算でも容易に得られます。

その72gが 300 + 600 = 900g の塩水に含まれる訳ですから、割り算一発で濃度は8%と分かります。  (1)の②から混合に使う食塩水は4%と10%だと分かっていますから、濃度てんびんから混合した食塩水の重さの比は ①:② です。 あとは割合の線分図で<クチビル>を作って、

もとめるの重さは  200g  

 

<今日の話題に関連して:その1>

(2)の解法では合計を利用するというノウハウを使いました。 そういった「ノウハウを身に付けて行くという作業」が、何年もの時間を使って取り組む受験勉強の課題のひとつです。 ノウハウは知ったから、覚えたからと言って使えるようになるものではありません。 繰り返しの演習だけが身に付ける手段です。 お子様が一発で覚えなかったとか、使い方を忘れたという理由で厳しく叱りすぎるのは危険です。

 

<今回の話題に関連して:その2>

洗足学園の受験生向けのWebコンテンツは、一見の価値があります。 自校の過去問に関しても2007年から今年までの全ての受験回についてPDFで公開されています。 それも問題と解答というレベルではなく、出題者による解説付きで!

特に塾の講師から見て、途中式の評価について明記されていることが嬉しいです。

引用(解説の冒頭から): また記述式の問題3題が出題されています。 その採点方法は答えがあっていない場合のみ、途中の考え方を見て、途中点を加えています。

引用(大問4の解説末尾):この問題は記述式の問題です。 容器A、Bの濃度がどちらも8%であることが求められた場合や、面積図やてんびんなどの図が書けていた場合、途中点が与えられます。

 

<今回の話題に関連して:その3>

<濃度(塩水算)>の解法については<水の濃度を考える問題と面積図>についてまだ書いていませんが、今回でいったん区切りとします。 

<濃度(塩水算)>を学ぶ時期について5年生の各塾のカリキュラムを見ると、栄光ゼミナール(および新演習を使っている塾)が第16回だからちょうど今頃かな? サピックスとグノーブルが割合の三用法から始まる<割合>シリーズのひとつとして夏期講習の直前。 四谷大塚(および早稲田アカデミーなどの準拠塾)がちょっと早くて5月連休の直前か直後にやったはず。 

さて、各塾、各校舎、各クラスの先生たちはどんな解法を説明したのかな、するのかな。 とても興味あります。

 

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