<濃度(塩水算)>の解き方に関する2日目です。 <面積図>と<濃度てんびん>について特徴と使い方をまとめました。 昨日もそうでしたが「この2つの解法もどちらが優れているのか」などと考えるものではありません。 適材適所で使いこなすべきです。 その使いこなしのコツも書きます。
昨日の記事はこちら。
塩水算のいろいろな解法比較その1:しのぜ表 -
てんびんの使用を嫌って面積図だけで濃度の問題を解かせる塾も多いようです。 それはなぜかと理由を考えてみました。
そもそも<テントウ虫>の導入で最初の説明に長方形の面積を使うぐらいですから、逆に<テントウ虫>で数値の関係を表せる問題は、全て面積図を使うことができます。 乗算とその積が、長方形の縦と横と面積の形で目に見えますので分かりやすい解法です。 塾の先生の中に<濃度てんびん>を嫌って<面積図>を好む人が居るのも、食塩の重さが面積として目に見える、という所を分かりやすさの点で重視しているのかも知れません。 はたして、そうでしょうか?
<面積図>
実は<面積図>をつかった濃度の解き方には2つあります。 ひとつは食塩の重さ(=面積)を意識させる方法で、もうひとつはア=イという<面積一定>に注目させて縦と横の反比例を使う方法です。
私は濃度の単元を教えて行く途中で、一回だけ面積図を扱います。 それも1つの例題で上の2つの解き方を続けて解説するという方法で。
<面積を意識させる解き方>
1:左の長方形の食塩水には 300g × 4% の食塩が含まれている。
2:右の長方形の食塩水には 500g × 8% の食塩が含まれている。
3:このふたつを混ぜると食塩の重さは単純に合計になる。
4:だから混ぜたものの濃度は面積の合計を幅の合計で割ったものだ。
<ア=イを意識させる解き方>
5:今やった計算って<平均算(のべ算)>と同じだよね。
6:ってことは(斜線を引いて)、ア=イを使えるわけだ。
7:面積が同じ、横幅の比は 3:5 、では縦の長さの比は? そう! ⑤:③
8:高さの合計は4、 それを⑧分の⑤にして2.5、 4 + 2.5で答えは 6.5
9:この計算って(横向きのてんびんを書き足して)、てんびんと同じだよね。
もう気付かれたことと思います。 この2つの解き方を続けて説明することで、食塩の重さを計算する解法と、比を使う解法の橋渡しをしているのです。
そしてその後、濃度の問題で私が面積図を使うことは「ほとんど」有りません。 と言うのは<面積図>のいろいろな使い方の中で<濃度の面積図>は難しいもののひとつだと考えるからです。
<濃度の面積図>で縦軸は濃度、つまり割合という実体の無い比べるための数です。 <つるかめ算>でも縦軸が割合の問題は急に正答率が下がります。 考えることの抽象度が上がると分からなくなるという事例のひとつです。
理科の<金属の酸化>にも<割合を使ったつるかめ算>の問題があります。 ひとつは「部分的に未酸化物の残る問題」で、もうひとつは「鉄と銅の混合粉末を完全に酸化させて元の混合割合を求めさせる問題」です。
<濃度の面積図>の説明に続けて<割合を使ったつるかめ算>と理科の<金属の酸化>の例題を演習できると、知識の冗長化によりトータルの解答能力が効率的に上げられます。 大手の塾で教えている中だとカリキュラムの縛りが厳しいので出来ませんけれど。
濃度の問題の中にも面積図を使わせたいものがひとつ有ります。 それは「食塩ではなく水の濃度を使った方が楽になる問題」です。 それの実例は、いずれまた。
<濃度てんびん>
と言う訳で、ようやくてんびんにたどり着きました。
私は濃度の問題は最終的にてんびんが使えるようになる事を薦めています。 てんびんは食塩の重さをいっさい使わずに答えを出せるので、楽だし、早いし、間違いも少なくて済みます。
しかし、比の習得が不十分な生徒には面積図ではなくて、しのぜ表を使わせます。 そして更に苦手という生徒にはL型ビーカー図を書かせます。
生徒の習熟度ではなく問題の種類で分けて、てんびん以外の解法で濃度の問題を解かせるのは次のような場合です。
『水の濃度を考えた方が有利な問題では、面積図』
『還元算との複合問題では、L型ビーカー図』
『複雑なやりとりの問題を整理したい場合には、しのぜ表』
参考書の解説の中にはてんびんの腕の長さを濃度の値に合わせて書いているものが有りますが、これは無駄です。 そもそもてんびんは「比の習得が済んでいる生徒」を対象に考えていますので、腕の長さは左右対称でそこに丸数字で比の値が書いてあるだけの図で十分なはずです。 もしそれが分かりにくいという生徒が居たら、てんびんは使わない方が良いです。 したがって、腕の長さは左右対称に書けば十分なはず。
ただし、特別に腕の長さを濃度の値に合わせて書く場合も有ります。 ひとつは<取り違えの塩水算>、食塩水AとBの割合を間違えて混合したことで6%の食塩水を作る予定が8%になってしまった、というような問題で、もうひとつの例が5月12日に書いた早大学院の問題です。
<濃度(塩水算)>は出題しない学校は無い定番の問題です。 当然ながら出題される問題の難易度も非常に幅広くなっています。 そういう問題にひとつだけの解法で対応できるわけがない、そう私は思います。