<濃度(塩水算)>の単元はどの塾でも小5上巻のポイントとなる単元です。 そしてまた解き方が<ビーカー図><しのぜ表><のりしお表><面積図><濃度てんびん>など多数あります。 それらの特徴と使い方をまとめました。
解法の比較をする前に・・・
自分の教えた解き方でないことを生徒がした時に、叱る先生が居ますね。 「そんな解き方、誰が教えたぁぁぁ!」とか怒鳴ってたり。
そこまで強烈に使わせるってことはよっぽど自信のある解き方なのかな、塾としても研究しきった最良の解法なのだろうな、と思うのが普通ですよね。 ところがどっこい、クラスが変わったら、同じ校舎内なのに別の解法を使ってたりして。
生徒に使わせる解法を厳しく制限するって、その先生にはきっとしっかりした理由がおありなのでしょうけれど、さてそれは「生徒が問題に正解できること」を最大の目標にしたものなのかなぁ? 疑問に思うのは私だけ? ・・・はい、嫌味です。 わたし、そういう先生に怒りを感じてます。
まぁさすがに<濃度(塩水算)>の問題で「解き方は、これ以外は駄目!」と言う先生は居ないと思いますが、あきらかに人によって好き嫌いは有りますね。 好き嫌いで言えば私は<濃度てんびん>が好きです。 でも、いきなり<濃度てんびん>を教えることはしません。
と言う訳で、<塩水算(濃度)>を私が教える場合の流れに沿って、それぞれの解法ツールの特徴と使い方をまとめてみました。
<ビーカー図>
いわゆる<ビーカー図>(ビーカーのイラストに水面と食塩の小山を書き込んだもの)の絵は、導入授業の最初に一回だけ使います。 あとはいっさい使いません。 意味が無いから。
<しのぜのテントウ虫>
食塩水というものが何かわかったら、私はすぐに<テントウ虫>を使って<濃度>の<三用法>にあたる数値の関係性を覚えさせてしまいます。
【しお】 = 【のうど】 × 【ぜんぶ】
その際に必ず唱和させるのが 「しのぜ の ぜ は、 全部のぜ!」 というフレーズです。
【ぜんぶ】 = 【しお】 + 【みず】
この<しのぜ>って、塾によっては<のりしお>と教えているそうです。 たしかに口調は良いのですが、「り」の元になる「量」って何? 何の量?
こんな覚え方をさせておいて、付け足すように「量ってのは、食塩と水の合計だからな。まちがえんなよ。」とか言うより、はなっから 「しのぜ の ぜ は、 全部のぜ!」 と染み込ませた方が早い。
<しのぜ表>
食塩の重さを計算しながら解いて行く方法です。 計算の手間はかかりますが、具体的な数字を扱うので分かりやすいです。 ほとんどの入試問題でも<しのぜ表>で解答を出せます。
私も濃度の単元を教える初めの頃は<しのぜ表>を使って解説しています。 <濃度てんびん>を教えた後も、生徒が質問に来た時にまず自分で<しのぜ表>の枠を書いて、問題文からわかる数字を埋めて、それからまた質問に来なさいといったん帰らせる場合が多いです。
そうすると、自分自身で<しのぜ表>を書いた時点で「わかったぁ!」と解き方を見つけてしまう生徒が多いです。 なぜなら<しのぜ表>というのは、縦横の並び方そのものが解法になっているからです。 並び方が解法になっていることも見せたいので、問題の手書き解説で<しのぜ表>を書く場合に、私はかならず計算の順番を矢印で書き込んでいます。
<L型ビーカー図>
ある生徒が私の手元に来て、どうしても<しのぜ表>になじめない、という相談に来ました。 書いてある意味はわかる、でもなんか良くわからない。
ためしに<ビーカー図>を書いてみせると、これなら受け入れられると言う。 さて、どうしたものか。 力押しに<しのぜ表>を強制するのは避けたいし。
そこでL字形の枠に数字を書いたもの、<L型ビーカー図>と私は呼んでいるものを書いてみました。 そしたら、これなら分かるって言った。
数学や算数は、複雑な現実世界を単純な形に抽象化して考える学問ですが、この抽象化という作業のどこかで引っかかると、算数が苦手とか嫌いという子を作ってしまいます。 その引っかかるポイントは十人十色、それを見極めるのが教える側の仕事ですし、教える醍醐味でもあります。 この時も質問に来た生徒に「おぉ、ここで引っかかる子も居るんだ。」と教えてもらいました。
いわゆる<ビーカー図>と<L型ビーカー図>の違いは、<L型ビーカー図>は数字の配置そのものが計算の手順を示していることです。 質問に来た子もしばらくは<L型ビーカー図>を書いて解いていましたが、同じことをやってると気付いた時点で書くのが楽な<しのぜ表>に自然に移行していました。
苦手な子への説明以外にも<L型ビーカー図>を使う問題ジャンルがあります。 それは<濃度>+<還元算>の複合問題です。 「ビーカーA、B、Cがあって、AからBに3分の1を移し・・・」みたいな操作を逆にたどって計算をして行く問題の場合は、表に整理しずらいので<L型ビーカー図>を矢印で結んで数字を埋めて行きます。
長くなるので今日はここまで。
今日ご紹介した解法は全て、しお(食塩)の重さを計算する方法でした。
明日は<面積図>と<濃度てんびん>という比を使って答えを出す解法について、特徴と使い方をまとめます。