算数の受験につかう解法ツールの長所のひとつとして「考え方が目に見える」ことがあります。 その事例として 早大学院 2013年(平成25年)の算数から 大問1の(3) を取り上げて見ました。 出題単元と使う解法は<塩水算(濃度)> <3種以上の食塩水の混合> <濃度てんびん> <しのぜ表>です。
【問題】
濃度2%の食塩水Aが300g、濃度4%の食塩水Bが200g、濃度6%の食塩水Cが400g、濃度12%の食塩水Dが300gあります。
① A、B、Cの食塩水をそれぞれ300g、200g、□g混ぜたとき、その濃度は3.5%になります。
② A、B、C、Dの食塩水を何種類か混ぜて濃度5%の食塩水をできるだけ多く作りたいとき、食塩水Aを□g、食塩水Bを□g、食塩水Cを□g、食塩水Dを□g使います。
【解説】
生徒からの過去問演習での質問に、問題コピーに書き込んで返答した時のイメージをそのまま載せておきます。
①の問題は早大学院の受験生なら時間をかけず着実に得点できなければいけません。 なので解き方の解説は省略します。 <テントウ虫>は書いていませんが、左下の表はそこから派生して作れる整理表による問題の整理で、矢印が計算の順番を表しています。 この頃はまだ単純に口調の良さで<ぜのし表>と書いていました。 今は<テントウ虫>の上に来る名称を最初にした<しのぜ表>としています。
生徒からの質問は、②の冒頭に書いてある 「声教の解説では とりあえず全て混ぜてしまってから 特に説明無しにDの量を減らして作っている。これはどうやって見つけるのですか。」 というものでした。
声の教育社の解説で、最初の一行はこんな文章でした。 『A~Dの食塩水をすべて混ぜると、 (14+400×0.06+300×0.12)÷(500+400+300)×100=(14+24+36)÷12=☆☆☆(%) (☆☆☆の部分は分数で「6と6分の1」です)になるから、5%の食塩水をできるだけ多く作るにはDの食塩水を混ぜる量を減らせばよい。』 たしかに、いきなりこう言われてもなぜDだけを減らせば良いのか判りにくいです。 ちなみに、式の中にいきなり登場する14と500という数値は①の解説中で使った数字を説明無しに引用しているものです。
Dを減らす理由を直感的に伝えようとしたのが今回の解説図に書いた<濃度てんびん>です。 ふだん私は濃度の数値に関係なくてんびんの腕の長さを左右対称に書くのですが、この解説では特別だよと断ったうえで濃度差の数値どおりに腕の長さを書いています。
早大学院を受ける生徒で過去問演習をおこなう小6の秋だったら理科の<てんびんの吊り合い>は瞬殺で解けるはずですから、図を書いた時点でだいたい「あっ、わかった!」と叫んで戻って行きます。
<濃度てんびん>についても解き方を機械的に丸暗記させる受験ツールと批難する人がいますけれど、このように「考え方が目に見える」というポイントにも注目して欲しいです。